あらすじ
天満屋の遊女お初は、田舎客と一緒に大坂三十三の観音巡りの最中、生玉社前の出茶屋で馴染み客の徳兵衛と遭遇する。徳兵衛は、お初と深く契って末を約束していたが、実は自分の身に大変なことが起きたと打ち明ける。

徳兵衛は叔父にあたる親方から内儀の姪と夫婦になれと言われ、それを断ると、既に継母が受け取ったという持参金二貫目を返せと迫られたらしい。驚いた徳兵衛は、すぐに継母から二貫目を取り返してきたが、友達の九平次が何とか一日だけ金を融通してほしいと懇願してきたので、徳兵衛は男気からその二貫目を九平次に貸してやったと言う。

その時、町衆を引き連れた九平次ガが一杯機嫌で境内を通りかかる。徳兵衛は期限が過ぎているので金を返してくれと迫る。しかし、九平次は金をかりた覚えなんかないとうそぶく。びっくりした徳兵衛は、九平次の判の突かれた証文を見せるが、それは以前に落して無効になった判で、町会にも届けてあると開き直り、挙句に徳兵衛を偽判使いの大罪人と逆ねじを喰わせて罵る。騙されたと知った徳兵衛は腕ずくで取ろうとするが、取り巻き連中に散々痛めつけられ、逆に悪者と決めつけられる。手負いの徳兵衛は言い訳のために心中の覚悟を決め、すごすごと帰っていく。

天満屋に連れ戻されたお初は、徳兵衛の噂に胸を痛めていたが、店の表に徳兵衛の姿を見つけ、打ち掛けの裾にそっと隠して店に引き入れ、縁の下に隠してそ知らぬ顔をしていた。そこへ九平次がやってきて、徳兵衛の悪口を散々言うが、お初はぴしゃりと言い返し、縁の下の徳兵衛と心中の覚悟を確かめあう。

お初は店の者が寝入ってから、白無垢の死に装束で部屋を出て、店の者に見つからぬように明かりを消し、徳兵衛とともに手に手を取って表に出て行く。

お初と徳兵衛は梅田橋をわたり、曽根崎の森まで行って、棕櫚と松の連理の木に体をしばり、お初は徳兵衛の刃にかかり、徳兵衛は剃刀で喉を切って、相果てたのであった。