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「心中万年草」しんじゅうまんねんそう
主な登場人物

成田久米之介     吉祥院の寺小姓
梅          雑賀屋与次右衛門の娘
雑賀屋与次右衛門   紙屋の主人
花之丞        梅の兄
美濃屋作右衛門    梅の婿
九兵衛        駕籠かき
伊吹千右衛門     久米之介の友人の兄 


あらすじ
大高野山南谷吉祥院の寺小姓成田久米之介は、ゆくゆくは出家しなければならない身ながら、麓の神谷の宿雑賀屋の娘お梅と許されぬ恋に落ちていた。何とか山を下りたい久米之介は、播州飾磨の大名に仕える故郷の父が跡継ぎに呼び戻したいという偽手紙をお梅に書かせるが、吉祥院法印に届くはずのその手紙が久米之介に届き、お梅が久米之介に宛てた恋文が法印に届いてしまう。

女と通じるという破戒の罪が明らかとなった久米之介は、吉祥院法印から破門され、深い契りを結んで兄と慕った祐弁律師からも激しく怒られ、なじられる。久米之介は、全山が嵐に荒れ狂う中、高野山から追われてしまう。

一方の雑賀屋では、京から下ってきた美濃屋作右衛門とお梅との祝言が今宵と決まり、家中がその準備で賑わっていた。気が気でないお梅は、しょんぼりと山から下りてきた久米之介を見つけ、駆け寄る。

久米之介とお梅の二人が二階へ上がったあと、作右衛門が血相を変えて駆け込んでくる。お梅と通じた久米之介が山を追われるの実際に見て、疵物を押し付けるつもりかと怒鳴り込んできたのであった。お梅の父と作右衛門はつかみ合いの大喧嘩になるが、お梅の母が取り成し、二階の二人にも短気なことをせぬようにと諭した。

母の思いに応えて、お梅が二階から降りてきたので作右衛門は機嫌を直し、二階で祝言の床杯をしようと言い出す。あわてた両親は、祝言の夜の石打ちにかこつけて灯火を消し、二階の久米之介を逃がそうとする。ことろが久米之介を一心に慕うお梅は、闇の中そっと久米之介の帯について、一緒に雑賀屋を抜け出してしまう。

久米之介とお梅は、死に場所を求めて不動坂の女人堂へと上って行く。女人堂には、久米之介の姉さつが父のお骨を持ってやってきていて、「父の初七日の弔いを弟とともにしたいとはるばる来たが、弟の行方が知れない」と闇の中で嘆いた。はっと驚く久米之介であったが、弟とは名乗らずに別れを告げ、久米之介お梅の二人は、女人堂の側で心中を遂げたのであった。

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