あらすじ
京の茶屋井筒屋の遊女お花が、恋仲の刀屋職人半七の仕事場へ、半七の叔母と偽って訪ねてくる。主人はあやしみながらも、半七の部屋へ通す。その直後に本当の叔母が大坂から、預かり物の刀を携えてやって来る。騙されたと知った主人は、半七の部屋の障子をけやぶり、半七とお花をさんざんに叩く。叔母はとっさに、お花は腹違いの妹であると言ってその場をとりなし、主人をなだめる。主人は叔母の嘘にまんまと騙され、詫びを行って出て行く。

叔母は持参した刀を半七に見せ、お侍から預かった物であるが、実はこの刀こそ、武士であった半七の祖父、父母を死に追いやった祟りの刀であると因縁話をする。町人となった半七に祟ることもないであろうから、注文の細工をしっかりこなし、武家への出入りの足がかりになるようにと願い、叔母は刀を預けて帰って行く。

石懸町の遊女お花は、間もなく年季が明けようとしていたが、強欲者の継父と井筒屋の主人から、金二十両のために年季を延ばすように迫られていた。しかし、お花は半七と交わした夫婦の約束をたてに、納得しなかった。今日も店に来た継父がお花に向かって、散々半七の悪口をまくしたて、親子喧嘩になる。店の外で聞いていた半七はこらえきれずに中に飛び入り、継父に手持ちの二十両を投げつける。継父は、二十両ぽっきりで夫婦にさせられぬと投げ返し、二人は大喧嘩となり、半七は店から追い出される。

お花は馴染みの坊主客に、祇園丸山の茶屋へ朋輩と一緒に連れ出される。座興の阿弥陀くじで買い物役を引き当てたお花は、まんまと店を出て、半七と落ち合う。お花は、先程の二十両の出所を半七に問い詰める。半七は、叔母から預かった刀を安物とすり替えて作った金であると、自らの罪を白状する。覚悟を決めた二人は、大坂の叔母のところへと発つ。

　半七は、お花を連れて、大坂の長町にある叔母の家を訪ねる。半七は刀をすり替えた罰を受けるために来たことを告白しようとしたその時、お屋敷に呼びだされていた叔母の夫甚五郎が、血相を変えて戻ってきて、刀が偽物であったと告げる。事の重大さに驚いた叔母は、三代にわたって祟るという刀の因縁が、半七に悪心を起こさせたと言って、全ての責任をかぶり、自ら腹を切って自害してしまう。