近松TOP ■世話物24作品
「鑓の権三重帷子」やりのごんざかさねかたびら
主な登場人物

笹野権三    表小姓
浅香市之進   御膳番
さゐ      市之進の妻
きく      浅香家の子
虎次郎       〃
すて        〃
川側伴之丞   権三の同僚
ゆき      川側伴之丞の妹


あらすじ>
笹野権三は鑓の名手で、また伊達者の美男子であった。

茶道の相弟子川側伴之丞の妹お雪は、そんな権三にほれ込み、乳母の仲立ちで一夜を共に過ごし、その後、仮の結納の品として家紋入りの帯を権三に贈り、権三はためらいながらも婚約を承知した。

藩主のお祝いの席で、真の台子の茶の湯が開かれることになったが、茶の名人の浅香市之進は江戸勤めで留守のため、その門下の者に任せられることになった。真の台子は一子相伝の秘伝で、門下には伝授された者は誰もいなかった。権三は、市之進の留守宅を訪ね、女房のおさゐに巻物を見せてほしいと懇願する。

おさゐはかねがね権三に好感を持ち、我が娘菊の婿にと考えていたので、菊を嫁にすれば、一子相伝の戒律に叶うと迫る。権三は躊躇するが、伝授のために婚約を承知する。

そこへ、お雪の乳母が権三とお雪の仲人の依頼に来て、事実を知ったおさゐは憤るが、姑の嫉妬と噂されてはと胸に秘める。事情を知らぬ権三は、その深夜、伝授の巻物を見せてもらいに訪れる。おさゐは、権三の家紋入りの帯を見て、お雪との仲を厳しく問い詰め、権三の帯を解きほどき、庭に投げ捨てる。帯を取られてあわてる権三に、ならこの帯をしめろとおさゐは自分の帯を解いて与えたが、権三はむっとして同じく庭に投げ捨てる。
 
おさゐに色仕掛けで夜這いを仕掛け、伝授の巻物を授かろうと、こっそり庭に忍んでいた伴之丞は、その一部始終を見て、二本の帯を拾い上げ、「おさゐと権三の不義密通」と叫び、飛び出していく。二人は仰天するが、もはや言い逃れは出来ないと覚悟を決める。

二人は松山を出て、但馬から京に入り、さらに大坂から伏見へと道行く。権三の願いはただひとつ、妻敵として市之進に討たれることであり、おさゐも同じく夫の手で討たれることであった。それが武士として、また武士の妻としての筋の通し方であった。そしてついに二人は、伏見京橋の橋の上で、市之進に追い詰められ、見事望みを叶えて討たれたのであった。


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