近松TOP ■世話物24作品
 
「博多小女郎波枕」はかたこじょろうなみまくら
主な登場人物

小町屋惣七
小女郎        奥田屋の遊女
小町屋惣左衛門    惣七の父
毛剃九右衛門     海賊ノ頭
奥田屋四郎左衛門   奥田屋主人
菱屋嘉右衛門     家主
平左衛門       海賊
弥平次        海賊
 
 

あらすじ
商用で博多に出向く船に乗った京の商人小町屋惣七は、海賊毛剃九右衛門一味の密貿易の場を見てしまい、海に投げ込まれる。運よく命を拾った惣七は、馴染みの遊女小女郎に一目逢いたく、乞食のような風貌で柳町を訪ねる。

小女郎はことの顛末を聞かされて驚き、さらに身請けの約束が叶えられないことを知って嘆く。そんなところへ、七、八人連れの客がやって来て、景気のいい話しをはじめる。その話し声を聞いた小女郎ガそっと覗いてみると、知り合いの九右衛門であった。小女郎は、以前に何かの時には相談にのると言ってくれた九右衛門の言葉を思い出し、借金を申し込む。頼まれた九右衛門は男気を出し、小女郎を請け出してやると約束をする。喜んだ小女郎は、その礼を言うために惣七を連れて部屋に入る。惣七は相手が九右衛門と知り驚いて、悪事をばらそうとする。九右衛門はいきり立つ子分を退け、小女郎のためにもと言いくるめ、惣七を海賊の仲間に引き込む。

晴れて夫婦になった惣七と小女郎は京の心清町ニ家を構えるが、二人が留守の間に、父惣左衛門が来て、家具一式から畳まで売り飛ばしてしまう。家主が駆けつけ咎めると、父は惣七が密貿易に手を染めているという噂を聞いて、正道の商売をするように、心を変えさせるための投売りだと説明する。惣左衛門は隣の町役所へ連れて行かれる。

そのあとへ戻ってきた惣七は、ただならぬ様子を見て身の危険を感じ、すぐに家を離れようとする。そこへ九右衛門が仲間の手形を受け取りに現れる。しかしそこに手形のないことを知った九右衛門は、惣七を裏切り者と決め付け、刀を抜いて争いになる。町役所から戻ってきた父の機転で、無事九右衛門は手形を手にして帰って行く。父は商人の道、人の道を説いて諭し、惣七夫婦を逃がしてやる。

惣七と小女郎は、人目につかぬよう粟田口から、四日市の知り合いを頼って京を後にする。石薬師に程近いところで、駕籠を乗り換えようとしたところで、捕り手に捕まり、惣七は駕籠ごと網をかけられてしまう。連行しようと駕籠を担ぎ上げると、底から夥しい血が流れ出した。覚悟を決めた惣七の自害であった。そこへ検非違使が駆けつけ、今上天皇ご即位の祝いに、死罪一等減刑と伝えられるが、時すでに遅し。あとに残された小女郎は、狂ったように嘆き悲しんだ。

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