あらすじ
天満で紙屋を営む治兵衛は、曽根崎新地の遊女小春といい仲になり、店の身代を揺るがすまでに入れ込んでしまう。しかし、身請けをする甲斐性もない治兵衛は、なりゆきで小春と心中の約束を交わす。

その気配を察した女房のおさんは、小春にどうぞ夫を死なせないで欲しいと手紙を送る。妻の切実な訴えに、小春は女同士の義理を立て、治兵衛と別れる決意をする。そんな二人のやり取りを知る由もない治兵衛は、小春に裏切られたと思い込み、心底小春を恨む。

それからしばらくして治兵衛は、小春が恋敵の大金持ち太兵衛に身請けされるという噂を耳にして、蒲団を被って忍び泣く。そんな治兵衡の姿を見るに見かねたおさんは、ことの真相を与兵衛に明かす。

治兵衛は愕然として、「なら小春は死ぬかも知れぬ」と案じる。「そうなっては、私に義理立てしてくれた小春に、私の義理が立たぬ」と、おさんは治兵衛に店の有金と質草の着物を持たせて、小春を身請けするように計らう。そこへ、おさんの父親が現れてその様子を見咎め、ついに堪忍袋の緒を切らし、無理やり二人を離縁させておさんを連れ帰ってしまう。

夫婦の縁をも切られた治兵衛は、心中を心に決めて色茶屋に出向き小春を誘い出す。夜更けの橋を渡り歩いて、最期の場となる網島の水門にたどりつく。二人は髪を切って出家の身となり、小春は治兵衛の刃にかかり絶命し、治兵衛は小春の腰帯で首を吊って息絶えてしまう。来世で必ず夫婦として結ばれるようにと祈りながら。