あらすじ
商売に身の入らぬ放蕩三昧の河内屋与兵衛は、親兄弟の説教にも耳をかさず、色町の遊女遊びに明け暮れていた。
そんな様子を見るに見かねた義理の父親徳兵衛は、与兵衛を立ち直らせるため、妹のおかちに婿養子を取らせて身代を継がせるつもりだと一芝居をうつ。そんな親心も知らずに、与兵衛は逆上して徳兵衛に手をあげ、実母のおさわを天秤棒で殴りつけて、ついに勘当を言い渡される。
家を追い出された与兵衛は、運悪く高利貸しの小兵衛と出くわし、借用書を突きつけられる。
与兵衛は、今夜中に必ず返すと大見得を切って別れるが、勘当された身の与兵衛に金の算段などあてのあるはずもない。追い詰められた与兵衛は意を決して、向いの油屋豊島屋へ金の無心に訪ねる。が、あいにく主の七左衛門は留守で、居合せた女房のお吉に泣きつく。
しかしお吉は、自分の一存では貸せぬと断る。切羽詰まった与兵衛はお吉に、油を二升貸してくれと持ちかけて油断させ、その背後から隠し持った脇差を手に忍び寄る。異様な気配を察したお吉は驚いて逃げようとするが、与兵衛は力ずくでお吉を捕まえ、一気に脇差を突き刺した。お吉は、血と油にまみれてもがき苦しみ、ついに息絶える。与兵衛は震える手で金庫から金を奪って逃走する。
お吉のお逮夜、集まった町内の衆の前に、血に染まった書きつけがひらりと舞落ちる。紙に書かれた筆跡は与兵衛の字に間違いないとなり、お吉殺しの下手人は与兵衛であることが判明し、与兵衛は捕えられて自白する。
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