あらすじ
堺の百姓左治右衛門は、息子清十郎の許嫁と娘を連れて、清十郎の奉公している姫路の米問屋但馬屋へ年賀に出かけた。その途中、たまたま出会った清十郎の同輩の勘十郎から、清十郎が主人の娘お夏と密通していると聞かされる。勘十郎は、お夏の嫁入り道具を今夜船に積み込むところであるが、道具が届けば清十郎は密通で磔になるだろうと左治右衛門を脅し、嫁入り道具の積み込みを押えるという一札を書かされる。それは、勘十郎が道具の代金を騙し取るための計略であった。

お夏の内祝いが行われているところへ、勘十郎と清十郎が帰ってきた。勘十郎は、嫁入り道具の代金は払ったが、荷物を差し押さえられたと言い訳した。一方、久しぶりにあった清十郎とお夏は、嫁入り蚊帳の中で通じているところを見つけられてしまう。主人の九左衛門は、二人の密通を知り、また清十郎の父が騙されて書いた証文に激怒する。さらに、清十郎の部屋から大金がみつかり、盗人の疑いをかけられて、ついに店から追い出されてしまう。

その夜、清十郎はふたたび店に忍び込み、勘十郎の悪だくみを知り、勘十郎を殺そうとするが、誤って同輩の源十郎を殺して逃げ出す。それを知ったお夏は狂乱して、清十郎の後を追う。

清十郎の妹の俊と許嫁のさんは、歌比丘尼となって清十郎を捜し歩くが、その途中、狂女となったお夏と出会い、互いに嘆き悲しむ。そこへ、清十郎が獄門にかけられると噂を聞いて、刑場にかけつける。群衆の中に三人の姿をみつけた清十郎は、処刑の前に煙草を一服すいたいと所望し、お夏の差し出した煙管で、喉を突いて自害する。驚いたお夏も、とっさに後を追って鑓で喉をつく。

そこへ役人が駆けつけ、九左衛門、勘十郎、左治右衛門たちを詮議。勘十郎の罪科が明白となって、捕まえられる。
その後、お夏は尼となり、清十郎の後世を弔ったのであった。