あらすじ
万年町の紺屋の入り婿徳兵衛は、実家の色茶屋重井筒屋の遊女お房と馴染みを重ねていた。そのお房にぜひとも必要な銀ができ、徳兵衛は妻のお辰の留守中、周旋屋の娘を妻に仕立てて印判を勝手に使い、口入屋治右衛門から銀四百匁を借りて家を出る。

外から帰ったお辰は、出しっ放しのままの印判から様子を悟る。そこへ、お辰の父宗徳が、徳兵衛の借金を治右衛門から聞いて、怒鳴りこんでくる。お房はその場をとりなし、宗徳を引き取らせる。

何も知らずに帰ってきた徳兵衛に、お房は恨みの数々を訴える。妻の貞節な心に感じ入った徳兵衛は、治右衛門から借りた銀を妻に返し、お房とは今後一切縁を切ると約束する。徳兵衛は隠居宗徳のところへ、ことの顛末を報告するために出かけるが、その途中にお房のことを思い出し、妻とお房の間に立って思案にくれる。そしてついに、お房の待つ重井筒屋へと走りだす。

一方お房は、約束の時間になっても徳兵衛が姿を見せないので、絶望の内に自害を決心するが、その様子を悟った内儀が、肩もみにことよせて意見して諭す。そこへなにくわぬ顔で徳兵衛がやってくる。内儀は二人を合わせぬように、お房を向かいの肥後屋へ送り出す。お房を追って出ようとする徳兵衛を、兄夫婦が無理やり引き留め、二階の部屋に閉じ込める。

炬燵の中で徳兵衛は一人苛立つ。そこへ、肥後屋から抜け出してきたお房が、屋根伝いに忍んでくる。二人は心中の決意を語りあう。その気配を察した兄は、そ知らぬ顔をして二人を懲らしめ、思い止ませようとする。やがて兄の懲らしめから逃れた二人は、心中を決めて最期の場所を求め重井筒屋から逃げ出す。

徳兵衛とお房は、樽屋町から道頓堀を抜け、高津の大仏殿勧進場を最期の場所と定めて行くが、探し求めるお辰や子供の声に追われるように死に急ぎ、お房は徳兵衛の刃にかかり、徳兵衛は畑の中の井戸にはまって命を果てる。