あらすじ
丹波の国由留木家の幼い調べの姫が、江戸の入間家へお嫁入りすることになったが、出立を前にむずかり出した。そこで乳母の滋野井は姫の機嫌を直そうと、馬子の三吉を呼び込み、道中双六を打たせて遊ばせた。

姫の機嫌を直した三吉は褒美を貰うが、その三吉が突然、乳母の滋野井は自分の母親だと言い出す。確かに三吉は、滋野井と別れた夫与作との間に生まれた一子与之介であった。由留木家を追放になった与作は行方知れずで、三吉は幼い頃から馬子として一人で生きてきたのである。しかし姫君に仕える滋野井は、親子の名乗りをあげることはできなかった。江戸へ出発する行列の側で、三吉は悲しげに馬子唄を歌うのであった。

東海道の関の宿白子屋では、街道に名高い遊女の関の小万たちが客を引いている。その白子屋の隣は本陣で、調の姫一行が逗留していた。小万には丹波の与作という恋人がいたが、与作は博打の深みにはまり、また小万の父は年貢が払えず水牢に入れられ、小万の悩みは尽きなかった。

久し振りに白子屋へやってきた与作は、小万に石部の八蔵に大金を借り、商売用の馬を引き渡す約束をしてしまったと打ち明ける。そこへ八蔵がやってきて、与作ととっつかみあいの大喧嘩になる。小万は間に入って、父親のために貯めていた金を八蔵に渡して帰らせる。

博打の借金のために小万の大事な金をつかわせてしまった与作は、隣の本陣にいた三吉に、大名の金を盗むようにけしかける。父親と同じ与作という名ゆえに慕う三吉は、得意げに引き受けるが、盗みに入ってすぐつかまってしまう。息子の罪にうろたえた滋野井は、立場も忘れて三吉の命乞いをするが、三吉は代官所に引き渡される。そこへ駆けつけてきた与作は、三吉が自分の子と知り、我が子を罪に落とした恐ろしさに、あとを追って死のうと小万を連れ出す。

伊勢街道の千貫松までやってきた与作と小万が心中しようとすると、調の姫一行がやってきて、三吉のけなげさに免じて罪を許し、さらに与作を元の侍として取りたてて、小万も助けてやる。姫君のおおせにより、街道に名高い与作小万のはやり歌が響き、賑やかな踊りが繰り広げられるのであった。